菌のはなし

無菌は体にとっていいことではない

人間というのは、菌との共生関係で生きているわけですが、その共生関係がうまくいかないと、自身のバクテリアバンスがおかしくなり、体の中で不具合が起きてきます。体の内側と外側のバクテリアを取り締まるのは、免疫ですが、それまでうまく機能していた免疫のシステムが働かなくなると、やがて異常をきたし、体のバクテリアが反逆を起こすのです。

最初に攻撃するのは何か。ただならぬ異質なもの、つまり胎児、こどもを殺してしまう場合もあるとか。そこで、最先端の不妊治療を行っている『空の森』クリニックでは、患者の体内を調べ、足りない菌を足していくという治療を行っています。医薬の分野で人工的に菌をつくりだし、女性の体内に注入していくと膣内のバランスが整えられ、受精しやすい状態に導かれていくのです。

その最先端の不妊治療が行われる手術室は、高性能の無菌クリーンルームが必要とされています。しかし、それ以外の部屋は、ふつうに清潔が保たれている状態。「無菌は、体にとってあまりいいことではないから」と医院長である徳永義光先生は言います。処置を終えたら、むしろ自然のままの状態に戻ったほうがいいと。一歩進んだテクノロジーと、自然本来の姿が共存している場、それが『空の森』です。

10年ほど前、設計の依頼を受けてはじまったプロジェクトが『空の森』でした。ちょっと不思議な名のクリニック、『空の森』についての話は、また別の機会でしようと思います。