音のはなし
高周波は人間の耳に聞こえているか その1
あるとき大橋さんという音の専門家と知り合いになりました。バリ島が好きで、一度途絶えてしまったバリ島のガムラン音楽を再生し、王様から表彰されたことがあり、教授であり、科学者であり、そして『AKIRA』の映画音楽を手掛けられた人でもあります。
その多彩な活動をする大橋さんのすごいところは、音に対して独自の観点をもち、自分の勘を信じること。たとえば、人は高周波を聞きとれないといわれていますが、大橋さんは「無意識のうちに聞いているんじゃないか」と。
いっぱんに大人の耳の可聴範囲の上限は20kHz、子どもは30kHz、そして年齢を追うごとに可聴範囲は狭まり、50歳を過ぎると15kHzほどになるといわれています。
でも「ほんとに、そうか?」そう大橋さんが思うきっかけは、レコードから聞こえてくる音の存在でした。同じ音楽でも、CDだと音があまりよくない。これは高周波が関係しているんじゃないか。
そこで大橋さんは、ひとつの実験を試みます。人の体にラジオアイソトープ(放射性同位元素)をごく微量を投与し、それを追跡して分析するというもの。自然界に存在する元素に、エネルギーが加わると放射線を発しながら体の中で崩壊されていき、どんな酵素(化学物質の一種)が分泌されているのかを調べるです。ちなみにわずかな量なので、すぐに分解されて体には残りません。