素材の味を知る
貴晴
僕は長く大学の教員をしてきて、心を病んでいる学生と話をしてみると、そのほとんどは食生活が乱れているね。自宅から通っているという学生でも、ちゃんとご飯を食べていなかったりする。でも朝ごはんをちゃんと食べるようになると、朝起きるようになるし、運動をしたりすると、かなりのパーセンテージでいいほうに戻っていく。コンビニの弁当やインスタント食品を悪く言うつもりはないけど、そればかり食べていると体の調子もあまりよくないし、気もどんどん短くなっていく。原因と結果じゃないけど、体にいいものを食べることは、ものすごく大切なこと。
由比
添加物を多く口にしていると、明らかに体の調子が悪くなるのと、いろいろな心の乱れにもつながっていくと思う。私も手塚に言われるまではそんなに気にしていなかったけど、確かにそうだなって。
あと、だしの素やブイヨンを使うと、全部同じ味になっちゃうことに気づかされた。そういうものを使わずに作ると素材の味がしておいしいとわかるようになり、一切使わなくなった。そういう単純なことが、意外と知られていないんじゃないかな。だからみんな、あれを使うのがあたり前だっていう感覚になっちゃっている。全部、同じ味にならないほうがおいしいんだよというのが、みんなもわかるといいなと思う。
――家庭の料理って、日によって味のばらつきがあったりするからいいんですよね、だから飽きない。
貴晴
失敗する場合もあってね。
――でも、失敗しても家庭で作ったものは、まずくてもおいしいと思います。
貴晴
まずくてもおいしいって、いい言葉だね。そうそう、うちの娘は天かすが好きなんですよ。揚げものをやると、天かすができるでしょ。焦げちゃったりするものもあるけど、その焦げたのも捨てないでくれって。ホットケーキを焼いて端っこのチリチリになったところが一番好きだって、かき集めて喜んで食べる。あれはね、お店では出てこない。こういう味を楽しめるのも家で作るからで、やっぱり料理を中心にしてインタラクティブな関係ができあがっていくって、いいと思う。