木のこと
海に丸太を浮かべている光景、見たことありますか。じつはあれ、木を乾かしている。海水に浸けてどうして乾くんだって思うでしょ、浸透圧を利用して木の中の水分を出しているんです。最終的には地面に上げて乾燥させるけど、海水に浮かべることで材質が変わりにくいと聞きました。
津波で海水を被って枯れた木は生木です。大木ですから木が完全に乾くまでには10年くらいはかかる。でも10年待つわけにはいかないので、清水寺の構造研究をしている今川のりひでさんから生木を使って建てる技術を聞きました。
まず、大きな生木を乾燥させる時は「芯抜き」をしなさいと。通常、生木は「背割り」と言って幹に割れ目を入れて乾燥させます。そのままの状態(丸太)で乾燥させると外側の水分が早く抜けるから表面が縮んでひびが入る。すると別のところから割れたり、切るとバラバラに割れてしまったりしますが、あらかじめ割れ目を入れておくと割れにくくなるんです。塩害した木は巨木だったので木の真ん中の芯を抜き、内側からも乾くようにして割れを防ぐということをやりました。
そして柱に使う場合は、その木が切られる前(植わっていた状態)と同じ方向(東西南北)にして使いなさいと。時が経過すると木はその方向に動くのでバラバラにならない。これを無視していい加減に使うと、木がぐちゃぐちゃになっちゃうんだそうです。こういうことは構造力学では教わらないことで、伝承されてきた知恵を未来に伝えていくことの大事さを学びました。一番古くて、一番新しい。昔ながらのお寺だから嵌合結合をやったわけではなく、未来へと時代を超えるために使った技です。