伝染していく

ITはいかに特許を守るか、ですが、建築はどんどん真似されていく。たとえば『ふじようちえん』のドーナッツ型をしたような建築物が、ポツ、ポツできています。あたかもドーナッツショップみたいに。「みんながつくりたる!」ということは、いいと思うからでしょ。僕らにとって、それは幸せなことだと思っています。料理も、おいしそうなレシピは、どんどんみんなが真似するでしょ。

由比
『ふじようちえん』ができてから、中国でもドーナッツ型の建築が建っていると聞くし、ベトナムでも。ひとつの建物をつくって「いいな!」と思ってもらえると広がる動きがあって、この頃は屋根の上に上がる建築も増えてきたみたいだし。

貴晴
建築のインパクトって、すごいんですよ。
『屋根の家』を提案した時、じつは、これで大丈夫かなと思いながら仕事していたんだよね、最初は。それをおもしろがって、施主の高橋さんはのっかってきたんだけど、あれから15年以上が経って気がついたら、屋根に上がることがあたり前のようになっていて。建築がおもしろいのは、うまくやるとそれがまわりに伝染して広がっていくこと。あのしまじろうのマンガ(幼児通信教育教材のキャラクター)の中にも『屋根の家』が登場しているみたいだから。

由比
フランスのマルセイユに行った時、コルビュジエが建てた『ユニテ・ダビタシオン』を見学したんだけど、近くに真似したアパートがいっぱい建っていて、ベランダにはテントが張られていて、植物がいっぱい置かれていた。まるでひとつの種から広がっていくように、みんなが「いいな」と思うと自然に広がるんだなって。個人的な趣味に終わらない、みんなが真似したくなるものをつくる、そういうものを私たちはめざしたいなって思っている。

貴晴
もちろん建築もオリジナリティが大事だけど、それだけが目的じゃない。「これ、いいじゃん!」みたいなそういうものができたら建築って、正解のところがあるよね。