希望の街
今やっているプロジェクトは『希望の街』というもので、これは暴力団排除の活動で、北九州市の真ん中、小倉で、いろんな組織の本部が解体され、そこをどうしょうか、というものです。あけっぱなしにしておくと、その中でまた悪いことが起きちゃうんじゃないか。そこを、あらたな街づくりの場にしようと。
そもそも、なぜ、人が望まない組織になっちゃうのか。もともと自助組織だったものが、変質したものだと思うんです。それが起きるというのは、世の中の内と外に境界をつくったり、人として境界をつくったり、学歴や貧困、差別など、いろんな理由が絡んでいます。そういう問題を改善しながら、みんなが助けあうような街をつくろうというのが、『希望の街』プロジェクトです。
その中心にいるのが、奥田知志さん。僕らが設計した東八幡キリスト教会の牧師さんで、「一番大事なことは、人と人との境界をなくすこと。街と自分との境界をなくすことだろう」と言います。
福祉関係の施設をつくる時にまず問題になるのは、その中にいる人を守るというのが、逆に人を閉じ込めることにもなっていくということです。その一番の典型は老人ホーム、いわゆる特別養護老人ホームと呼んでいる施設で、おじいちゃん、おばあちゃんは、みんな「家に帰りたい」と言います。でも施設の中に閉じ込め、外に絶対出さないようにしちゃう。だから散歩もできない。閉じ込めると、何より事故を未然に防ぐことができ、介護する側はいろいろと都合がいいわけです。制度も、そうやってできている。で、そこにいる人たちは24時間ケアを受けられるけど、ある意味、自由な生活はなくなっています。
じつは、これって、特別養護老人ホームだけで起きていることじゃなく、精神病院でも起きている。また、支援が必要な人たちの場でも起きています。その一方で先端の施設、こころみ学園という私の兄が行っている施設は、境界がありません。出ようとすれば、自由に外に出られる。やはり人間は閉じ込められると、出たくなるもので、いつでも出ていいなら勝手に出ますよね。ここにいたほうがいいと思えば、ここにいます。
あの、昔も塀があったんだけど、その塀をどうやってなくそうかっていう運動が、今もいろんなところで起きているんです。