チャイルド・ケモ・ハウス

小児がんを抱える子どものお父さんやお母さんは、入院しちゃうと社会から完全にきれてしまいます。なぜかっていうと、小児がんセンターっていうのは、免疫システムを抗がん剤で壊してしまうからクリーンルームに子どもは居ないといけなくて。お父さんお母さんでさえ、外の菌を持ってくるからと勝手に出入りをしちゃいけない。その時、出入りしなくてもいいように、看護婦さんが全部やってくれることになっています。でも、そんなこといっても子どもは母親がいなくちゃダメで、だから母親の泊まり込みを病院は黙認するんです。
子どもの隣に仮設ベッドを毎晩広げ、そこに何ヶ月も寝る。食べ物はロクなものが取れない。コンビニの惣菜をお父さんが持ってくるとか、そんなふうな生活になっていき、次第に体も精神も病んできます。

これはなんで生じているかというと、境界をひいたから。ここから先はクリーンで安全な世界、こっちは俗世界。まるで黄泉の国の壁みたいになっているのが、小児がんの病棟です。それを変えようとしている人はいるけど、なかなか変わっていかない。
その時、僕らがやろうとしたのは、ハウスをつくることでした。
病院をつくって、その周りにハウスを建てる。一つの子ども部屋がハウスの中側に開いていて、家族の人は子どもをケアができる。ふつうは看護婦さんにやってもらうけど、看護婦でなくてもいいことを、全部看護婦にやってもらっているから大変なんです。その部屋をつくることで、家族がやる分と、看護婦がやる分、すると病院との間があいまいになってくる。
病院の中と外、扉一枚で仕切られているところに、ハウスをつくることで、中でもない外でもない半隔離みたいな、そういうものをつくることによって、もう少し社会が変わっていくんじゃないかって。

コミュニティデザインというのは、どうやってその境界を消していくか。そういうことを僕たちはずっとやってきたんじゃないかなと、今日の午前中はそんな話をしていました。

―――建築物をつくるって、そういうところから入っていかないとダメなんですね。
いや、そんなことを考えて設計しているところは少ないですよ。そんなこと言っていたら、見合わないし、間に合わない。
――そうですよね、合わないですよね。
ただ、僕らはものすごく、そういうことをやりたいと思っていて。