がんばらないエコロジー①
由比
よく私たち、「がんばらないエコロジー」と言っていて、がんばって温度を調節してエコロジカルするんじゃなく、ただ単純に窓を開けたら気持ちがいいんじゃないかって。あたり前のやり方で、エコロジーをするのが一番いいはずなのに。
空調を使わなくても、気持ちいいよね。夏は涼しいところをさがし、冬は温かいところをさがせばいい。そういうあたり前の暮らしのほうが、理に適っているんじゃないかと。
貴晴
じつは、あの『ふじようちえん』が大きな賞の候補に上がった時、最終選考で落とされたことがありました。この建物の環境条件をチェックする専門家が、社会的に大丈夫かどうかを判断する。それで、その人が絶対この審査を通しちゃダメだと言い出して、賞を逃したんです。
その理由は「気密性が悪い」「窓が開けっぱなしじゃないか」「太陽電池がない」「屋上緑化をしていない」その人には、外で子どもが走り回っている情景とか、窓を開けっぱなしにして風が入ってくる気持ちよさというのは、伝わらなかったんです。その人の頭の中では、窓はきちんと閉っていて、空調機を効率よく回して、太陽電池を備えたエコな電気も使える、それが建築として一番機能的でいいと思ったんでしょう。確かに数字的には、それがいいかもしれない。
それを言われて、ふじようちえんの園長先生の返答は「うちは冷房は使っていないんですよ」でした。その人は冷房がよく効く建物について一生懸命考えるんだけど、冷房を使わなくてもいいという考えにおよばなかったんですね。
これが建築の世界で、非常に怖い動きです。なんでもかんでも、「高気密で高断熱」冷房も暖房もすごい効くように考える。「それって、人なの? ちょっと、おかしいよね」冷暖房の効率がよくたって、エネルギーを使っていることには変わりがないわけですよね。